第1回CSI統計研究会 「消費者物価指数(CPI)の作成方法と基準改定」

日程 : 2011年6月16日 16:40~18:10
場所 : 池袋キャンパス 12号館 第4会議室
講師:総務省 統計局 物価統計室長 永島勝利 氏
題目:「消費者物価指数(CPI)の作成方法と基準改定」
企画 : 政府統計部会 菊地 進 (経済学部 教授)
参加者:学内外より15名
第1回CSI統計研究会

第1回CSI研究会概要

6月16日社会情報教育研究センター主催による第1回CSI統計研究会が開催されました。

CSI統計研究会発足のきっかけとなったのは、菊地進教授からの「政府統計の実務者から実際の統計作成現場で起こっている話を聞ける場所を作り、広く研究活動に役立つものにしたい」というアイディアからこの研究会はスタートしました。

永島勝利氏記念すべき第1回目の講師に総務省統計局物価統計室長 永島勝利氏をお迎えし、「消費者物価指数(CPI)の作成方法と基準改定」をテーマにお話頂きました。

永島さんのわかりやすく、詳細な解説に参加者の方からたくさんの質問を頂き、第1回研究会は大盛況でした。

永島さん、お忙しい中講師としてお話頂きありがとうございました!
    講師:永島 勝利氏

研究会 研究会

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第1回CSI研究会レポート

題目:消費者物価指数について-作成方法と基準改定-

レポート作成者:政府統計部会RA
鈴木 雄大
(立教大学 経済学研究科修士課程)

総務省統計局物価統計室の永島勝利氏に上記のテーマで報告をしていただいた。
報告は

1、消費者物価指数(CPI)の概要
2、作成方法
3、基準改定

の内容で行われ、基準改定だけでなく、他国のCPIとの比較や品質調整の問題等、広範に及ぶものであった。
「理論と実際」の食い違いがしばしば問題となるが、実際に統計作成にかかわっている永島氏からは、実務的な観点から貴重な意見をいただいた。報告終了後には、報告の内容や3月11日の東日本大震災のCPIへの影響等に対する質疑応答があり、活発な議論が行われた。

1、消費者物価指数(CPI)の概要
CPIは500以上に及ぶ商品・サービスの価格変化をウエイト付けして総合化した指標で、基本的枠組みが次第に古くなるのに対処するため、5年ごとに基準改定が行われる。
CPIの利用は社会経済の様々な場面に及び、具体的には年金額等の改定の指標などとして使用される。
(2008年以前は物価スライド制が採用されていたが、現在は新たな制度(マクロ経済スライド制)となっている。
ただし、経過措置などもあり、いわば新旧制度の併存する状態となっている。)
・そのほか、景気判断、金融政策等の重要指標としても使われる。

CPIの実際の動きに係る補足説明
・2008年8月~10月ごろにかけてのCPIの上昇は国際的な原油価格等の高騰を反映したものである。
・2010年4月のCPIの下落は高校授業料無償化の寄与が大きい。CPI全体に対して約0.5ポイントの押し下げ効果があった。
・2010年10月のCPIの上昇はたばこの値上げの寄与が大きい。CPI全体に対して約0.27ポイントの押し上げ効果があった。
・CPIは2009年以降下落傾向にあり、これを踏まえて一般にデフレと言われるところであるが、最近は、下げ止まりの兆候が見て取れる。

※CPIには季節要因が含まれるため、前年同月比を見るのが一般的であり、直近の23年4月には生鮮食品を除く総合指数の前年同月比が2年4カ月ぶりにプラスとなった。これは前年押し下げ要因であった授業料無償化の影響がなくなったことによるものと考えられる。

2、CPIの作成方法
○COLI(Cost-of-Living Index)とCOGI(Cost-of-Goods Index)について
・効用一定の条件の下で品目や数量を固定しないCOLIと品目・数量を固定するCOGIとがある。
・経済理論的アプローチからはCOLIが自然
・「効用」を測定することが難しい等の実際的な理由から多くの国でCOGI指数を作成

価格データへのアプローチ方法
・銘柄規定方式:アメリカ以外の多くの国で採用。品目ごとに調査するスペック(基本銘柄)を指定
・確率比例抽出方式:アメリカが採用している方式。
(センサス局が行った)統計調査の結果に基づき、店舗、商品を確率比例抽出し、どの店舗でどの商品の価格を調査するかを決定。一度決定すると4年間固定。
→銘柄を決めるまでは確率的方法だが、決定されたのちは固定されるため、機動的でない。
※アメリカ方式=国際的スタンダードではない

品質調整手法(とりわけヘドニック法)
ヘドニック法(重回帰式分析)とは?
→価格と特性の関係を重回帰分析によって推定し、特性の変化による部分(品質変化分)を除去する手法

・日本→パソコン(デスクトップ、ノート)、デジカメの3品目で採用
・技術革新の著しい、製品サイクルの短い商品に有効
・変数同士の多重共線性、推定に利用していない変数も考慮する必要があり、半年ごとに見直すなど、定期的な検証が必要となる。

3、基準改定(5年ごとに品目、ウエイト、基準年を更新)
○2010年基準への改定の主な内容
・品目、ウエイトの改定
・高齢無職世帯指数の追加

○基準改定による指数値への影響
・一般的に基準改定を行うと指数値が下がる傾向がある
 →過去の改定の状況からは、品目入れ替えの影響は相対的に小さく(追加・廃止になる品目のウエイトが小さいため)、
ウエイトの改定による影響が最も大きい。
・基準改定により指数値が下がるのは、一般に、消費者はより安いものを購入する傾向があることから、安くなる傾向のある
もののウエイトがより大きくなる傾向があり、その結果、CPIが押し下げられるからである。つまり、消費者の代替行動の結果を反映したものといえる。
・これはラスパイレス連鎖指数(毎年ウエイトを更新)との乖離の原因でもあり、この乖離を見ることで、ある程度基準改定の影響の予測をすることができる。

質疑応答


・新製品の取り扱いについての見解は?
→新製品は2つのタイプに分けて考える必要がある。

1、品目としてそれまでにはなかったもの
→固定バスケットでは考えていないが、中間年見直しを行うことで対処している
2、品目は対象に含まれているが、スペック等が異なるもの
→銘柄のスペック等を代表的なものに変更する際に新製品が指定されることがある
※品目内では対応可だが、品目間では対応は不可

・東日本大震災の影響は?
→生鮮(月に3回調査する)の3月下旬のデータが一部の地域で入手できなかった。またメインである中旬調査のデータについても、一部の地域(4市町村)で入手できなかったため、これらについては、前月からの価格変動がなかったものとして計算した。4月からは平常通り調査できている。震災に伴う便乗値上げ等は、結果をみる限りほとんどなかったと考えている。

・東日本大震災の基準改定への影響(震災による支出パターンの変更等)は?
→新基準は平成22年基準であり、ウエイトは平成22年のものとなるので、震災の影響は基準改定には入り込まない。

・地域指数を利用した地域間の比較可能性は?
→毎月の結果は、主に、物価の変動を捉えることを目的とし、それに適した設計になっているため、地域間の比較には向かないと思われる。地域間の構造の相違を捉えるには全国物価統計調査等を利用した方がよい。

・調査方法、調査員
→3日間の日程を指定(メインとなる中旬調査では、12日を含む週の水、木、金曜日)し、その間で調査を行う。基本的に、調査員は、それぞれの品目ごとに、その地域で一番売れている店で、(基本銘柄に合致しているものの中で)一番売れている商品を調査する。商品の代表性は、主に、店舗の状況で判断するが、必要があれば店員に聞くこともある。なお、7日以内の短期のセールは対象としないが、月間セール等は含める。

・欧米の方法を調べているのか?
→欧州は国によって異なる点について細かく調査することは不可能であるが、主要国の主要事項や統一された基準によるHICP(調和消費者物価指数)など、共通性の高いものについては、適宜把握している。

・非消費支出等の扱いに関してはどのように考えるか?
→CPIはあくまで消費者物価指数であるから、非消費支出等は含めていない。

・高齢無職世帯とは具体的に何歳以上が対象となるのか?
→65歳以上ではなく、60歳以上を対象とする。これは団塊の世代を含める方がよいと考えたことが理由のひとつである。また、試算により結果に大差がないことも確認している。
高齢無職世帯の公表をする理由は、授業料など品目によっては、高齢世帯とそうでない世帯とで、支出パターンが大きく異なることがあり、そうした面に着目した分析に有用と予想されるため。
※価格データは総合指数のものと同一のものを利用し、ウエイトのみを変更する

・年金への反映には新たな高齢無職世帯指数を用いるのか?
→現行のCPIと高齢無職世帯の指数とが大きく異ならない場合には、データの安定性等の観点から、全体の指数を利用すべきと考える。つまり、高齢無職世帯の世帯数は、相対的に数が少なくなるため、通常のものよりも、ウエイトの精度が下がることを考慮した意見である。
※試算結果からは、全体の動きとは基本的に一致している

・基準改定を行うと指数はどのようになると予想されるか?
→立場上述べることができないが、一般的には連鎖指数に近づくと言われる。全体の指数と連鎖指数のグラフから想像してもらいたい。

・調査員にはどのような人たちがなるのか?
→非常勤職員として、一般の方の中から都道府県が任命する。調査方法の教育なども基本的に、各県で行う。

・ヘドニック法で調整すると過剰に調整することにはならないか?
→そのような指摘は実際にあり、今後の研究課題である。
PCなどにおいては、仕様が複雑で製品も多種多様であって、新製品の出るサイクルも早いため、他の品質調整手法では調整できないことから、ヘドニック法を利用している状況である。

以上、第1回統計研究会質疑応答でした。

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