第2回CSI統計研究会 『経済センサスの創設と基礎調査の結果の概要』

日程 : 2011年7月21日 16:40~18:10
場所 : 池袋キャンパス 13号館 会議室
講師:総務省統計局経済基本構造統計課 課長 岩佐哲也氏  同課長補佐 保高博之氏
題目:『経済センサスの創設と基礎調査の結果の概要』
企画 : 政府統計部会 菊地 進 (経済学部 教授)
参加者:学内外より20名

第2回CSI統計研究会

第2回CSI研究会概要

記録作成:政府統計部会
菊地 進(立教大学 経済学部 教授)
鈴木 雄大(同経済学研究科博士前期課程)

今回は総務省統計局経済基本構造統計課 課長 岩佐哲也氏、同課長補佐 保高博之氏に上記のテーマで報告をしていただいた。

第2回CSI統計研究会


(報告概要)はじめに

経済活動を同一時点で網羅的に把握することを目的として、経済センサスが創設された。すでに平成21年7月には初の基礎調査が実施され、平成24年2月には活動調査の実施が予定されている。平成26年の基礎調査についても検討が始められている。
平成23年6月に基礎調査の確報の公表に至ったので、調査の内容、結果の概要、そしてようやく整備が進められることになったビジネスレジスターについてお話ししたい。

1、経済センサスの創設
経済センサスは、統計法に基づく基幹統計として実施されるもので、農林漁家に属する個人経営の事業所を除く、すべての事業所・企業を対象とする。調査の目的は、すべての産業分野における事業所及び企業の基本構造を明らかにすることであり、事業所・企業を対象とする200近くある各種統計調査実施のための母集団情報の整備に役立てることである。調査自体は、事業所・企業の捕捉に重点を置いた基礎調査と、経理項目の把握に重点を置いた活動調査の2つに分けられる。

2、大規模統計調査の統合実施
経済センサスは、事業所・企業統計調査、サービス業基本調査、商業統計調査、工業統計調査、特定サービス業実態調査を統合実施するもので、同一時点での包括的な産業構造統計の作成、ベンチマーク統計のなかったサービス分野の統計の充実、SOHOなど調査員調査では把握が困難な事業所数の増加といった求めに応えるべく創設された。行政記録(登記情報等)の利用や本社一括調査の導入により、調査員調査では把握することができなかった事業所の把握も目指している。また、基盤情報としてのビジネスレジスターの整備にも貢献する役割がある。

3、事業所の定義
経済センサスにおける事業所の定義は、工業統計調査・商業統計調査等と同様、経済活動の場所ごとの単位であって、原則2点(1、経済活動が単一の経営主体の下で一定の場所を占めて行われていること、2、物の生産や販売、サービスの提供が従業者と設備を有して継続的に行われていること)を満たしているものを指す。本店も営業所も工場も、その場所ごとに従業者を有して活動していれば、それぞれを事業所とし、同一の工場の敷地内にあっても経営主体が異なれば別の事業所とする。また建築現場の現場事務所等はその場所で継続的に活動を行っているわけではないため、従業者は建設会社や下請け会社に含める。

4、調査区
調査区は町丁字単位に設定するが、範囲が広い場合は35企業を目安に区分する。また多事業所が入居するビルや地下街はそれぞれ別調査区とする。同一ビル内に30以上の事業所が存在する場合にはそのビルを独立した調査区とし、さらに50を超える場合は階数等で分けて別調査区とする。
今回の経済センサス‐基礎調査では、単独事業所及び支所数が10未満の企業の本社については調査員が担当し、10以上の企業の本社については、国・都道府県・市町村が分担して担当した。調査員については、1人70企業程度を担当している。

5、基礎調査と活動調査
平成21年に実施された基礎調査は、事業所・企業の補捉・名簿整備に重点を置いた調査であったのに対し、平成23年実施予定の活動調査は経理項目の把握に重点を置く調査であり、売上高やその内訳、必要経費等を調査する。基礎調査は総務省による単独調査であるが、活動調査は総務省と経済産業省による共管調査となる。活動調査の調査票は、産業等により異なる24種類があり、かなり詳細な調査となる。また、活動調査では、単独事業所は調査員調査とし、それ以外は国・都道府県・市区による直轄調査となっている。

6、本社一括調査の導入と行政記録の活用
従来の調査手法の違いは大きく二つある。第一は本社等一括調査の導入である。これにより企業の本社と支社・支所の関係が整理される。また外観から存在が確認できず、従来の調査員調査では把握できなかった支所事業所の把握が可能となる。
第二は商業・法人登記等の行政記録の活用である。従来の調査では、前回の調査結果を調査対象名簿として利用していたが、平成21年基礎調査では、事業所・企業統計調査の調査結果と今回が初めての利用となる商業・法人登記情報とを照合する方法を採った。これにより外観からは分かりづらい事業所を捕捉できるようになった。

7、新設事業所の扱い
調査手法が変わったことに伴い、新設事業所の捉え方についての変更が必要となる。事業所・企業統計調査では、前回調査で捕捉されず、新たに調査された事業所についてはすべて新設事業として扱っていた。しかし、今回の調査では、本社等一括調査や行政記録の活用によって新たに把握できたところがあり、そのすべてが新設とは限らない。平成21年の経済センサス基礎調査では、新たに確認された事業所のうち、調査項目の開設時期が平成19年以降のものを新設事業所とした。

8、平成21年経済センサス‐基礎調査の結果概要
総事業所数は635万6千事業所、事業内容等が不詳の事業所を除いた事業所数は604万3千事業所であった。従業者数は6286万1千人。都道府県別の事業所数の割合は、東京都、大阪府、愛知県等の大都市圏に多い。事業所数割合は、卸売業・小売業が最大で、宿泊業・飲食サービス業と続き、従業者数は卸売業・小売業、製造業の順である。経済センサスは大規模な全数調査であるので、細かい分析に耐えられる。産業小分類別人口1千人あたり事業所数による各県の特化係数の分析や、事業所数の全産業に占める割合が高い従業者数1万人以上の市区町村の分析等が行える。経営組織別、存続・新設・廃業別事業所数及び従業者数も把握できる。

9、経済センサス‐基礎調査の活用事例
経済センサス基礎調査は様々な用途へ活用される。第一に、最も代表的な例としては、地方消費税の清算と市町村に対する交付に際しての利用である。地方消費税1%(平成20年度の決算額では2兆4741億円)は各都道府県の「消費に相当する額」に応じて按分されるが、この「消費に相当する額」を算定する指標の一つとして、経済センサスの都道府県別従業者数が利用される。こうして清算され、都道府県の収入となった地方消費税の半分は、安定的な財政基盤の確立のため市町村に按分して交付される。この按分は、市町村の人口(国勢調査)と従業者数(経済センサス)に基づいて行われる。
このほか、国民経済計算の推計への利用も行われる。経済センサスによって得られた製造業や、卸・小売業等の個人企業の事業所数はGDPの個人企業の設備投資の推計に用いられる。さらに経済政策、環境政策、雇用政策、中小企業策等の指標とするなど行政上の利用、白書等における分析への利用も可能である。
経済センサスの結果は事業所・企業の基盤情報となることから、経済センサスによって得られた情報を事業所母集団データベースに蓄積し、各省庁や地方公共団体が実施する調査の母集団情報として利用される。正確な母集団情報が提供されることにより効率的で精度の高い各種統計調査の実施が可能となる。
経済センサスは細かい集計にも耐えられ、小地域統計の作成が可能となるところに大きな特徴がある。具体的な例として3月11日の震災時の浸水域の被害状況の把握が挙げられる。国土地理院のデータ(空中写真、衛星画像等)と組み合わせることで、おおよそではあるが、被害状況の把握ができた。

10、ビジネスレジスターについて
ビジネスレジスターは事業所・企業の母集団データベースであり、諸外国では産業関連統計の基盤データベースとして整備されている。標本による統計調査に際しては名簿情報が必要であり、平成14年から、事業所・企業統計調査のデータをもとに各種統計調査の名簿情報が提供されてきた。しかし、それは行政記録など利用可能な情報で継続的に補完されているということはなく、ビジネスレジスターとは言い難いところがあった。
こうしたなかで、平成19年の統計法改正により、ビジネスレジスターの整備が法律上規定され、平成21年策定の「公的統計の整備に関する基本的な計画」にもその計画的整備が組み込まれた。これを機に、行政記録(法人登記情報、労働保険情報)の活用を含めた検討が急ピッチで進められ、平成25年から新データベース(ビジネスレジスター)として運用を開始する予定となっている。
このビジネスレジスターは、経済センサスの結果を基盤に各種統計調査や各種行政記録(商業・法人登記情報、労働保険情報、有価証券報告書の開示情報等)を活用して更新を行う。その結果、年次の母集団フレームを作成・提供することが可能となっていく。また、事業所・企業を識別する共通事業所・企業コードを付番し、各府省において共通事業所・企業コードを保持することによって、調査・集計に活用していくことが期待されている。
この整備が進んでくると、より完備された母集団情報が提供されることにより、より正確な統計作成が可能となるとともに、各調査間における客体の重複を排除し、被調査者の負担の軽減にも役立てることができる。このビジネスレジスターには、整備に有用な民間情報や地理情報の取り込みについても検討を行っている。

質疑応答コーナー

※多数の質問が出され活発な質疑が交わされました。主なものを紹介いたします。

質問1

本社一括調査の場合、企業側は支社・支所の区別はつくのであろうか。この点が曖昧であると、支所の把握においてかなりの漏れが生じるようにも思われますが。

回答 

今回の本社一括調査により、従来補足できていなかった事業所について、本社から捕捉が可能となりました。また、今回は、支所の事業所情報をプレプリントすることができなかったため、企業側の認識のズレについては、統計局の方で事後的に企業への照会作業を行いました。活動調査に向けて、支所の確認作業を再度実施しております。今後はビジネスレジスターの整備も進み、支所情報をプレプリントすることも可能となっていきますので、更に捕捉精度が上がっていくと思われます。

質問2

 登記簿情報を利用しているとのことであるが、ペーパーカンパニーがかなりあると聞いています。この点についてはどのように対処したでしょうか。

回答 

 従業員がいない法人は事業所の定義上除かれますので、活動実態のない法人はかなりの程度除外できていると考えています。

質問3

 平成18年の事業所・企業調査では、総事業所数は609万2千事業所で、事業内容等が不詳の事業所を除いた事業所数は591万1千事業所となっており、これに比べると、基礎調査の結果ではかなり事業所数が増えているが、この間の経済実態を踏まえると実感に合わない。平成21年基礎調査との接続性についてどのように考えたらよいでしょうか。

回答 

 行政記録の活用や本社一括調査を導入したことにより新たに補足できた事業所があるが、その要因のみを切り出すことは難しく、統計局としては平成18年の事業所・企業調査との直接的な比較は行っていない。

質問4

 行政記録の活用によりビジネスレジスターが整備されていくのは大変良い方向であると思います。行政記録以外に利用されるものはあるのでしょうか。

回答 

 行政記録としては商業・法人登記情報、労働保険情報等を利用しているが、速報性を考えると労働保険情報が大変役立つと考えています。また、大規模な企業については、EDINET(有価証券報告書)情報の利用も大事であると考えています。その他、民間情報なども活用し、ビジネスレジスターは整備を進める中で年々精度が上がっていくものと考えております。

質問5

 私は統計学ではなく中小企業論の研究者なのですが、経済センサスは大企業から中堅、中小、零細企業まで全体を見渡せるのがよいと思っています。

回答 

 おっしゃる通り大企業については悉皆調査となっている調査がたくさんあります。しかし、中小企業はそうではないです。
中小、零細企業まで見渡せるところに経済センサスの意義がありますので、研究面でぜひご活用いただければと思います。 

 司会 本日は長時間にわたり貴重なお話をどうもありがとうございました。 (拍手)

以上

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