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​​第4回CSI統計研究会『都市基盤整備におけるGISを用いた空間統計の活用~柏市の事例をもとに~

日程 : 2012年9月27日 16:40~18:10
場所 : 立教大学 池袋キャンパス 15号館(マキムホール) 10階会議室
講師:細江まゆみ氏(財団法人柏市みどりの基金)
題目:『都市基盤整備におけるGISを用いた空間統計の活用~柏市の事例をもとに~』
企画 : 政府統計部会 菊地 進 (経済学部 教授)
参加者:学内外より14名

第2回CSI統計研究会 

第4回CSI研究会概要

記録作成:政府統計部会
菊地 進(立教大学 経済学部 教授)
鈴木 雄大(同経済学研究科博士後期課程)

 CSI第4回統計研究会は、財団法人柏市みどりの基金の細江まゆみ氏​を講師にお迎えし、上記のテーマで研究会を開催した。細江氏は大学院で研究活動を行っていた頃からGIS(ArcGIS)を利用しており、柏市の都市基盤整備(特に公園緑地)関連の分析等にGISを活用してこられた。今回の研究会では、デモンストレーションを取り入れていただいたことで、分析の結果だけでなく、作業のプロセスを知ることができた。細かい作業内容については、必ずしも理解できなかった部分もあったが、「分析」それ自体に要する時間は想像していたほど多くはなく、GIS利活用に大きな可能性があると感じた。ただし、分析を行う前段階としての「データの作成、整備」に要する時間が膨大であり、実際に行ったデータ作成の作業の一部をデモンストレーションで見せていただいたが、本当に大変な作業であった。細江氏もデータ管理の重要性について言及されていたが、GISを有効に利用するためには、GISソフトを扱う方法を習得するだけでなく、データの効率的な整備、管理が不可欠だと認識することができた。

第2回CSI統計研究会 


(報告概要)

1、はじめに(柏市の基本情報、都市基盤整備の状況)
柏市は1960年頃から人口が急増した。将来推計値によると、人口は2020~2025年にピークに達し、その後減少に転じると見込まれている。主要な都市基盤施設の整備状況を比較すると、柏市では、都市計画道路(近隣市(松戸、流山、我孫子)との比較による)や都市公園(同程度の人口規模の自治体との比較による)が低水準にある。これらは急激な人口の増加に対応すべく、宅地、学校の建設、下水道建設が優先され、道路整備や公園整備といった計画的な都市整備が人口増加に追い付いていないことが一因である。また、山林の減少が顕著であり、特に過去30年で緑地面積が約1000ha減少した。

2.政策支援GIS
政策支援GISとして、今回の研究会で紹介のあった内容は、大きく二つに大別される。ひとつは、課題を見つけるために利用するものである。GISを用いて現状を客観的に見ることができ、そこから課題を発見することができる。もうひとつは、発見された課題を解決するためにGISを利用するものである。それらを、①現状を知る、②現状を評価する、③シミュレーションをする、④優先順位をつける、という4つのレベルに分解してご紹介頂いた。

2-1 現状を知る
・人口、将来人口
柏市全体の人口は、今後しばらくは増加傾向にあると推計されているが、地域別にみると減少すると推計されている地域もある。具体的には、つくばエクスプレスの沿線地域である柏北部のエリアでは人口の増加が見込まれるが、昭和30年代の人口急増期に開発された柏南部を中心とするエリアでは減少すると予測されている。GISを利用して地図化することで、これらの傾向が視覚的に捉えることができる。
・空閑地、緑地の現状
市街化区域内にも空閑地が目立つようになっており、人口減少に伴い空閑地は今後も増加していくと予想される。一方、樹林地を中心に緑地面積は減少しており、また、不法投棄等によって、それらの緑地の中には荒れた緑地となっているものも確認されている。
・土地利用状況と都市公園の分布
柏市の土地利用状況を見ると、約半分は緑地であり、その緑地の大半は農地として利用されている。今後も市街地においては開発圧力が高いため緑地の減少が予想される。また、柏市の一人当たり公園面積を見ると、柏駅周辺を中心とした地域では、国の市街地における公園設置基準である5 m2に満たないところが多い。ところが、維持管理費は年々増加しており、通常の維持管理に加え、遊具等の修繕費についても今後多額の費用が見込まれている。
以上のことから、柏市の公園緑地行政では、①緑地の質の劣化の解消、②都市公園の効果的な整備、③限られた財源の有効活用、等をどのように進めていくかが主要な課題となっている。これらの課題を解決するため、柏市ではGISを用いた各種解析(緑地評価、公園整備効果のシミュレーション、緑地の効果的な配置検討、緑地を保全するための制度適用の優先順位づけ)や市民の方々の力を借りて緑地の質の向上等を図る取組(カシニワ制度)を実施している。

2-2 現状を評価する
重要な緑地に対して規制を強化することで、緑地の減少を抑えるという政策の根拠資料とするため、GISを用いて緑地の評価を実施した。具体的には、「微気象緩和」、「雨水流出抑制・都市型水害の軽減」、「防災」、「生物」、「レクリエーション」、「文化財・景観」という6つの評価項目を設け、緑地を項目ごとに評価し、その総計点により緑地をA・B・Cの3段階にランク付けするという方法を採った。AおよびBランクと評価された緑地を保全配慮地区とし、当該地区が開発された際の緑化率を従来の10%から30%に強化するよう、緑化基準の改正を行った。

2-3 シミュレーションを行う
防災公園整備の有効性を明らかにするため、GISを用いて整備効果の検証を行った。人口GISデータの作成、誘致圏の作成、整備効果を明らかにするエリアの抽出、抽出されたエリア内の人口の集計というプロセスを踏むことで、整備効果を客観的に明らかにすることができる(研究会でデモンストレーションをしていただいた)。また、柏市緑の基本計画の数値目標達成にむけた緑地配置のシミュレーションにもGISを利用している。効果的な配置になるよう、なるべく均等にコアエリア及びコアエリア・準コアエリア候補地を抽出し、それらをネットワーク化したうえで、面積補正を行い、配置計画図を作成する。コアエリアは、「レクリエーション」、「防災」、「エコロジカル」の観点から選択するようにした。なお、400 mごとのラインを適正配置ラインとしてコアエリア・準コアエリアの候補地を選定していくことで、配置の偏りをなくすという手法をとった(研究会でデモンストレーションをしていただいた)。

2-4 優先順位をつける
配置計画図で選定された候補地に対して、緑地の永続性を促す制度適用の優先順位を付けることで、効率よく制度を適用し、緑地の永続性の担保を図っていくため、GISを用いて優先順位づけを行った。市民緑地を例にとると、①人の利用、②費用対効果、③制度の適合性、④緑地の重要度、の4つの項目ごとに優先順位を付け、それら総合することで、最終的な優先順位をつけるという方法を採った。具体的には、必要となる指標のデータを作成し、各指標を適地順にランク付けし、ラスタデータを用いてオーバーレイを行い、最終的な総合ランク付けを行う(研究会でデモンストレーションをしていただいた)。このようにすることで、候補地の中から特に優先的に制度適用を図るべき地域を選択することができる。(政策支援)GISについて細江氏が思うこととして、次の点がある。GISは、分からないことが多く、失敗を繰り返すこともあったが、「こうしたい」が実現できるツールである。また、解析自体にはそれほど多くの時間を必要としないものの、解析するためのデータ作成に膨大な時間を必要とする。他の課にGISデータが眠っていることもあり、データ作成の作業量の短縮化のためには、それらのGISデータの発掘が重要である。

3.カシニワ制度
最後に、柏市の「カシニワ制度」を紹介する。カシニワは「かしわの庭」と「貸す庭」をかけた造語であり、柏市内で市民団体等が手入れを行いながら主体的に利用しているオープンスペース(=カシニワ)の創出・保全・維持に対して市及び関連組織がバックアップを行う制度である。緑地を保全・創出するためには、市だけの取り組みでは不十分という現実があり、市は市民のサポートに徹し、「つくる」過程を市民に任せる制度である。過去約1年半で98件の登録があり、 (財)柏市みどりの基金からは助成金も支給している。このカシニワを介した取組には様々なものがあり、取組実績が蓄積されてきている。今後の課題として、GISを用いたカシニワ適地の抽出や、普及啓発や参加を促す仕組み作り、助成金交付のための資金源確保、登録者の意欲向上に結びつく仕掛けづくり、制度運用側の継続性、等が挙げられる。


質疑応答コーナー

質問1

緑地の評価指標の作り方に関して。公園や緑地の評価項目で、トレードオフの関係が存在すると思われるが、これらの関係への対処はどのようにしているのか?

回答 

今回実施した評価では、トレードオフの関係への対処は行っていない。例えば、人の利用に対する価値も高く、生き物の生息空間としても価値の高いといった、トレードオフの関係にありながらも、両方の面から見て価値が高い緑地の評価が高くなっている。したがって、特出していずれか一方の指標の評価が高くても、他の指標の評価が低ければ、最終的な評価結果は低くなる。この欠点を解消するため、実際にどの制度をどの緑地に適用するかを決める段階で、緑地評価のみにとらわれない優先順位づけを行っていきたい。

質問2

事前に多変量解析等を利用した情報の縮約を行わなかった理由はどのようなものか?

回答 

市の職員は数年で異動があるため、データ作成や分析方法をできるだけ分かりやすいものにしたかったためである。今後見直しが必要となった場合に、専門知識がそれほどなくても、再現ができるよう、一般的に用いられている指標を単純に重ね合わせる手法をとった。

質問3

カシニワ制度は市内居住者のみが対象となるのか? また、登録された土地に長期にわたって関われる仕組みづくりはあるのか?

回答 

カシニワ制度を利用するための条件は、「柏市に拠点があること」なので、市外でも柏市に関わりがあれば利用することができる。長期的に関われる仕組み作りについては、今のところなされていない。これは、その土地の持ち主の事情(例えば相続など)に左右されるからである。​

質問4

柏市の公園整備水準が低いとの指摘があったが、これは時系列で見て低い状態が続いてきたのか?

回答 

公園の設置には大別して2つのケースがあり、城や寺等を公園に転換するケースと、新規に整備するケースがある。柏市には城や寺といった大きな歴史的遺産が少なく、大規模なニュータウン開発等も無かったため、低い水準が続いていたと考えられる。

質問5

公園の評価や整備計画を策定する上で、柏市以外の隣接地との調整は行っているのか(隣接地にある公園等は考慮しているのか)?​

回答 

現在は加味されていない状況にあるが、今後近隣の公園等も考慮する可能性はある。

質問6

複数の評価項目を用いて評価した現地を実際に見てどうだったか? 評価の高かったところは実際に見ても魅力的であったか?

回答 

実際に見て魅力的であったし、経験的な認識と一致していた。

質問7

GISに利用できるデータの管理はどのような状況か?

回答 

現在は多くの課で網羅的に管理されている状況にはない。したがって、何らかのデータが必要となった場合には、担当課との協議が必要となる。プライバシーの関係で、担当課しか扱えないデータもある。また、眠っているデータ等もあり、有効活用のための管理が必要と思われる。​ 

司会 本日は長時間にわたり貴重なお話をどうもありがとうございました。 (拍手)

以上

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